美術作品とそれを取り巻く社会との関係は複雑であり、一言で言い表すことはできません。作品を生み出す作家もある時代の一個人であり、作家が意識せずとも、時代の潮流や思想が作品に反映されることがあります。しかしすべての作品が時代の影響を受けた結果の産物ではなく、むしろすぐれた作品はその時代のものの見方さえも変えてしまうでしょう。
釧路における事例を考えるならば、当館所蔵作品である尾山幟《釧路炎上》は第二次世界大戦中における釧路の空襲という出来事が題材となっています。また、幣舞橋にある〈道東の四季〉の像は公共彫刻として、社会の中に溶け込んでいます。さらに当館では幣舞橋や釧路の港を題材とした作品を収蔵しておりますが、それらは描かれた時代の風景を探る際には史料的な価値を有するでしょうし、一方でそれら描かれたイメージが我々の釧路に対するイメージを形作るとも言えます。
本展では当館のコレクションを中心に、美術と、とりわけ釧路の社会との接点を探っていきます。